| 研究テーマ 発根バクテリアを使って植物の根を改良する |
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植物は、根で土壌に活着し、必要な水分とそこに溶け込んだ無機塩類などの栄養分を吸収し、生育します。したがって、根は植物にとってとても重要な器官です。一方、植物は土の中へ有機物を与え、そこに住む微生物の中にはそれを利用しているものがいます。さらに、植物の根は土の水分保持や土が流出することを防ぐために役立っています。以上の点から、植物の根は土壌の生態系に非常に重要な役割を果たしています。
現在の地球環境破壊現象の一つに砂漠化があげられます。この第一の要因は人類による森林伐採と過度の耕地の拡大および家畜による徹底的な草地の侵食です。結果として、乾燥地の拡大は日々増加しており、これを止めることができる良策は現在のところ限られています。 乾燥地から緑地を回復しながら地球環境の悪化を減速させるには、この乾燥という環境で生育できる植物あるいは土の飛散や流出を防ぐことができる植物を栽培し、さらにこれらが食料として利用できることが最良の方法だと思われます。昔から行われている作物の育種法を用いた乾燥に強い植物を作り出すことが現在も行われていますが、穀類・豆類・野菜類などの重要作物に耐乾燥性を与えることはことは簡単ではありません。一方、乾燥のストレスに応答し、耐乾燥性の形質を植物に発現させる遺伝子の単離と解析が分子生物学的な方法で行われ、耐乾燥性の分子メカニズムが少しずつ明らかにされています。 一方、根の改良、すなわち、根の数や伸長、水の吸収能などを改良することによって、土の中の水分・無機塩類をさらに効率よく吸収する耐乾燥性植物を作出する試みがなされています。現時点では、従来からの作物育種法を用いることで行われていますが、分子生物学的な方法によって根の数や伸長を制御する遺伝子の単離と解析が行われています。また、この根の改良は、耐乾燥性だけでなく、植物の生育能を向上させることもできそうです。つまり、根系の発達によって土の中の水分・無機塩類を吸収能が向上し、結果として植物体の生育の向上をもたらすと考えられます。 ところで、毛根病菌(Agrobacterium rhizogenes)という細菌は、Rhizobiaceae 科の土壌細菌で、植物形質転換系に利用される Agrobacterium tumefaciens と同じ属であり、マメ科植物に根粒を形成する Rhizobium 属細菌とも近縁です。この菌は通常は土の中で生存し、傷がついた植物があれば、その植物の傷口から侵入し、感染して腫瘍を作らせます(図 アグロ感染)。この菌が他の植物病原菌と異なってユニークなのは、A. tumefaciens と同様に、菌体内に巨大なプラスミドを持ち、その一部(Transferred-DNA: T-DNA)が菌体から植物体へ移行し、植物を形質転換することです。さらに、A. tumefaciens と異なっている点は、腫瘍の形が単なる癌腫ではなく根の形態を持つ毛状根と呼ばれる器官腫であることです(図 カランコエ毛状根 ニンジン毛状根)。毛状根は、形質転換根であるため、植物生理学的には本来の根(正常根)とは幾分異なりますが、形や機能的には正常根とよく似ており、挿し木などで見られる茎から直接出てくる不定根と呼ばれる根の分化の解析モデルとして役立つと考えられます。これまでに、A. rhizogenes のプラスミド上に発根に関わる遺伝子群が存在することは分かっていますが、これらが植物細胞内で発現して、どのように発根させるかについては何も分かっていません。 私たちは、この発根バクテリアである A. rhizogenes のプラスミド上の遺伝子群を解析することで、植物の根の分化機構を明らかにする研究を行っています。さらに、この分化機構を利用して、発根しにくい植物や根を増やして乾燥に耐えるような植物、あるいは根からの水分・養分の吸収効率が良いことで早く生長する植物の開発を行っています。 Agrobacterium rhizogenes 感染による発根機能を明らかにする 植物改良へのアプローチ Agrobacterium 属細菌とタバコ属植物の共進化 その他の研究 |
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| 広島大学・自然科学研究支援開発センター 遺伝子実験部門(遺伝子実験施設) |