| 1.分泌酵素遺伝子の導入による酵母 S. cerevisiae の育種に関する研究 | |
| |目次|次項目| | |
|
実用酵母の育種において糖類の資化、発酵能の向上は産業上重要なテーマである。同酵母はアミラーゼを分泌しないため澱粉を資化、発酵できず、また、セロビオースとラクトースについては細胞内取り込み酵素と分解酵素のいずれも持たないために利用できない。そこで、これら多糖類の分解酵素遺伝子を酵母に導入しその遺伝子産物を菌体外に分泌させることにより、多糖を菌体外で単糖に分解できる酵母菌を創生した。当研究室は、遺伝子操作技術を駆使して世界に先駆けて酵母の資化、発酵能力の向上を成し遂げた。本研究を開始するまでは、同酵母を宿主とした異種分泌酵素遺伝子のクローニングは皆無であったこと、また、同酵母はほとんど菌体外にタンパクを分泌しないために、従来から枯草菌等に比べてタンパク分泌能力は低いと考えられていた。本研究は分泌酵素を酵母菌の育種に応用することが実用上極めて有効であることを初めて示した点で画期的な業績である。
(分泌生産・アルコール生産) S. cerevisiae で高発現、高分泌を目指しているので近縁の酵母から遺伝子を単離した。検索の結果、Saccharomyces diastaticus よりグルコアミラーゼ遺伝子(STA1 と STA3)を、Saccharomycopsis fibuligera よりグルコアミラーゼ(GLU1)、α-アミラーゼ(ALP1)、およびセロビアーゼ(BGL1 と BGL2)遺伝子を単離した。これらの遺伝子を含むプラスミドで形質転換した酵母は培養上清にほとんどその遺伝子産物のみを著量分泌することにより、澱粉あるいはセロビオース(セロオリゴ糖)を分解しエタノール発酵した。DNA塩基配列よりグルコアミラーゼとセロビアーゼの一次構造を世界に先駆けて決定した。また、これらの酵素に特異的なペプチド配列を見いだし今後の分子育種に多大な指針を与えた。 (Gene Hunting 1) (Gene Hunting 2) 細胞内タンパクを分泌させる系の確立は育種においても重要な意義がある。 S. diastaticus の STA1(分泌性グルコアミラーゼ遺伝子)と S. cerevisiae の SGA1(胞子形成特異的細胞内グルコアミラーゼ遺伝子)の研究により、STA1 のTS領域(スレオニンとセリンを多く含むペプチド配列)が細胞内グルコアミラーゼを分泌させるのに重要であることを見いだした。そこで大腸菌の細胞内タンパクであるβ-ガラクトシダーゼ (lacZ) のN末端に STA1 のシグナル配列とTS領域を付加した融合遺伝子を作成し、これを酵母に導入したところ、融合遺伝子産物は細胞表層にまで移行し、形質転換酵母はラクトース資化能を獲得した。 本研究は、分泌酵素遺伝子の導入により酵母菌の資化能を飛躍的に増大させることに成功し、TS領域を利用することにより細胞内タンパクをも分泌生産できる方法を開発した。これらの業績はバイオテクノロジーにおける宿主としての酵母菌の重要性をさらに高めるものである。これら一連の研究に対して、昭和63年(1988年)日本農芸化学会奨励賞が授与された。 さらに、サッカロミセス属酵母におけるグルコアミラーゼ遺伝子の進化について研究した。S. diastaticus は、分類学的および遺伝学的にも S. cerevisiae と非常に近縁であり、唯一の相違は菌体外にグルコアミラーゼ (STA) を分泌することにより澱粉分解能を持つことである。すなわち、両酵母における種 (species) の進化はグルコアミラーゼ遺伝子の獲得で説明される。一方、S. cerevisiae においては減数分裂過程の中期に特異的に細胞内でグルコアミラーゼ活性が認められる。このグルコアミラーゼ (SGA) は減数分裂初期に合成されたグリコーゲンをグルコースに分解し、胞子壁の合成のための素材を提供している。このように、ふたつの非常に類似した酵素蛋白の発現が特異的に調節されている例は高等動物ではよく知られているが、微生物では希である。 STA と SGA をコードする遺伝子、およびこれらに配列が類似する DNA 断片の塩基配列を比較したところ、進化的にはごく最近、SGA が別の染色体上にある転写調節領域と分泌のためのシグナル配列を獲得して、STA が進化したものと推定された。このように劇的な染色体の再編成による遺伝子の進化を提示した例はこの研究が最初である。 (STA・SGA再配列) |
|
2.酵母の転写調節に関する研究 |
|
| |前項目|目次|次項目| | |
|
酵母 S. diastaticus から澱粉資化能を持たない変異株を単離し、それらの内から、STA1 遺伝子の転写調節因子をコードする GAM1, GAM2, および GAM3 遺伝子をクローニングしてその塩基配列を決定した。これらのタンパクは核内に局在し、自身は DNA 結合タンパクではないがタンパク間相互作用を介して STA1 の 5' 上流に位置する転写活性化配列を認識してSTA1 の転写を正に調節すること、また、細胞増殖、減数分裂や胞子形成においても重要な役割を持つことを明らかにした。以後、これらの遺伝子は他の多くの研究者によっても独立に単離され広く研究された。今日では、これらの因子は他の因子と巨大なタンパク複合体を形成し、多数の酵母遺伝子を正または負に調節するグローバルな転写調節因子であること、および酵母からヒトに至る真核生物の転写調節因子として広く保存されていることが判明している。
(Chromatin Remodeling) |
|
3.酵母の減数分裂と胞子形成に関する研究 |
|
| |前項目|目次|次項目| | |
|
S. cerevisiae の減数分裂を単独で誘導する遺伝子として IME2 遺伝子を単離し、これが減数分裂特異的なプロテインキナーゼであることを見いだした。本発見は減数分裂の初期過程においてタンパクのリン酸化が重要であることを全生物を通して初めて明らかにしたものである。(IME2・Sic1)IME2 は減数分裂の開始に必須であり、酵母の減数分裂開始シグナル(接合型と栄養源)は本遺伝子の転写調節を介して伝達されることを明らかにした。また、減数分裂過程における IME2 を中心とした逐次的遺伝子転写カスケードを樹立した。(IME1・IME2・Rpd3・Sin3) とくに、減数分裂中期に発現し、細胞内貯蔵グリコーゲンの分解に必要なグルコアミラーゼをコードする SGA1 遺伝子の転写調節における IME2 の役割を解明した。すなわち、SGA1 の 5'上流に位置する調節配列に作用するリプレッサー機能を IME2 キナーゼが阻害することにより、SGA1 の転写が活性化されることを明らかにした。
酵母の分化現象で、古くから不思議なこととして、長年その現象の解明が置き去りにされていたものに、「細胞濃度が薄いときには他の条件が整っていても減数分裂や胞子形成過程に分化誘導されない」ということがあった。この難問に対して、世界に先駆けて、以下のような明快な解答を得ることができた。1)酵母は減数分裂に移行するとき細胞外に減数分裂促進因子を分泌すること、細胞濃度が薄いときは本因子が不足するため減数分裂に入らないこと、細胞濃度が薄くても本因子を外から加えると減数分裂すること、本因子は酵母細胞がTCA サイクルで酢酸を資化するとき生成する炭酸ガスが培地に蓄積した炭酸イオンであり、これが培地の pH を上昇させている。2)培地がアルカリ性になると細胞は G1 期で細胞増殖を停止すること、これは培地のアルカリ化に特異的に G1 サイクリンである CLN3 の転写が抑制されることに因ること、CLN3 の転写抑制には酵母からヒトで保存された普遍的転写因子でありサイクリン依存的キナーゼである SRB10-SRB11 が重要である。3)SRB10-SRB11 は、もう一つの普遍的転写因子でサイクリン依存的キナーゼである KIN28-CCL1 の転写を負に制御し、一方、KIN28-CCL1 によって転写を正に調節されている。すなわち、SRB10-SRB11 と KIN28-CCL1 は相互転写調節ループを形成しており、これは酵母が適切に増殖を停止して減数分裂過程に分化するために重要である。 (細胞数依存的胞子形成) (SRB10/11) |
|
4.環境ストレスに対する酵母の細胞周期調節に関する研究 |
|
| |前項目|目次|次項目| | |
|
細胞は種々の環境変化を感知し、これに適切に反応する生体防御システムを持つ。酵母 S. cerevisiae は培地のアルカリ化を利用して減数分裂期に分化したが、酵母 Schizo- saccharomyces pombe はどのようにアルカリストレスに反応するのかに興味をもち、研究を始めた。S. pombe は各種ストレス下において(例えば、酸化ストレス、紫外線ストレス、培地の栄養源や浸透圧の変動など)、細胞分裂周期の G2 期を短くして、いち早く細胞分裂期を終え、休止期に移行して防御体制に入ること、また、これらのストレスは MAP キナーゼである SPC1を活性化して、細胞周期を調節することが知られていたが、SPC1がどの細胞周期遺伝子をどのように調節するのか不明なことが多かった。
研究の結果、アルカリストレスは二つの経路を通り細胞周期の G2 期から M 期への移行を促進することを見いだした。1)アルカリストレスは NIM1 のリン酸化を促進し、これを活性化する。これにより、CDC2 をリン酸化して不活性化する WEE1 キナーゼの活性が低下し、CDC2 の脱リン酸化が促進され、G2 期から M 期への移行が促進される。2)アルカリストレスは PUB1 ユビキチンリガーゼによる CDC25 タンパクの細胞内分解を抑えることにより CDC25 のタンパク量ならびに CDC25 プロテインホスファターゼ活性を増やし、CDC2 の脱リン酸化を促進する。さらに、高浸透圧ストレス、栄養源枯渇ストレス、および細胞内サイクリック AMP 枯渇は SPC1 を活性化し CDC25 タンパク量を増やす経路と、それ以外の経路を独立に活性化して、CDC2 の脱リン酸化を促進することを明らかにした。また、CDC25 は CDC2 を脱リン酸化する経路とは別の経路で G2 期から M 期への移行を促進することを明らかにした。現在、この新規な経路の解明を目指している。 (S. pombe cell cycle) |
|
5.メダカの性決定機構と血管形成機構に関する研究、および遺伝子組換えメダカを用いた環境ホルモンの生物評価法の開発 |
|
| |前項目|目次|次項目| | |
|
脊椎動物の性決定は胚発生時に起こり、始原生殖巣が精巣か卵巣のいずれかに分化することを言う。ヒトを含めた多くの動物の性は性染色体の構成で決定されている。すなわち、ヒトの場合、XとY染色体を持つ個体は精巣を形成し男性となるし、X染色体を2本持つ個体は卵巣を形成し女性となる。ヒトの性を決定する遺伝子はY染色体上にある SRY であり、この遺伝子の働きで男性になることがすでに明らかにされている。一方、下等脊椎動物(鳥類、は虫類、両生類、魚類)では、古くから「メスの性決定にエストロゲンが関与する」という仮説が広く支持されている。このようなエストロゲンによる下等脊椎動物の生殖巣分化に関する研究は、50年前、本邦のメダカ研究者により開拓され世界に広まった研究領域であるが、いずれの動物においても、この仮説に対する実験的証拠は得られていない。また、本質的な問題であるエストロゲン作用を仲介するターゲットの解明やその後の作用メカニズムに関する研究も未解明の課題として残されている。
エストロゲンは脊椎動物において多様な生理機能を持つことが知られている。ほ乳類では、その多くはエストロゲン受容体 (ER) と結合して新たな遺伝子の転写を活性化することにより発現されることが知られている。しかし、最近、エストロゲンは多様なターゲットを介してその生理機能を発揮していることが次第に明らかにされてきた。ほ乳類においては、古典的 ER (α-タイプ) 以外に β-タイプや数種の ER 様受容体が発見されており、エストロゲンの生理作用に複雑に関与することが推定されている。ノックアウト・マウスを用いた研究により、ER α- とβ-タイプは生殖器官と骨の発達あるいは性行動の制御に重要であることが証明されている。しかし、下等脊椎動物においては、薬理学的、免疫組織化学的解析により、ER α-タイプが主要なメデイエイターであると予想されているが、ノックアウトあるいはトランスジェニック動物の作成が長期間を要することや技術的に困難なため、まったく手つかずの研究領域となっている。下等脊椎動物においてこれらの課題を解明することの重要性は、1998 年第1回国際シンポジウム「脊椎動物の性決定」において提案されており、世界的にも緊急に解決すべき研究課題である。 当研究室では、淡水小魚類であるメダカを用いて性決定機構を研究している。メダカの性もヒトと同様に性染色体の構成で決まり、XYがオスでXXはメスになる。当研究室のメダカ d-rR 系統は野生の黒メダカと異なり、Y染色体の雄性決定遺伝子DMYの近傍に体色を緋色(オレンジレッド)にする遺伝子があり、X染色体上の当該遺伝子は劣性変異している。このため、ふ化後1から2日で、オスは体色が緋色、メスは白色となり、体色で遺伝的性を容易に判別できる特徴がある。これまでに、以下の結果を得ている。1)性決定時期のメダカ胚に ER α-タイプが極低レベルであるが発現していること、2)外から与えたエストロゲンによるオスのメス化(性転換)を抗エストロゲン剤であるタモキシフェンが完全に阻害するので、この性転換には ER の関与が示唆されること、しかし、3)メスはタモキシフェンを加えても正常な卵巣を形成すること、および、4)テストステロンをエストロゲンに変換するアロマターゼの阻害剤であるファドロゾールは、メダカのアロマターゼも阻害するが、メスへの分化は正常に起こった。他の下等脊椎動物の場合、1)から3)の結果はメダカの場合と同じであるが、4)の実験では、アロマターゼ阻害剤によりメスのオス化が起こると報告されている。他の研究者らは4)の結果をもって、エストロゲンはメスの分化に重要であると考えているが、この実験は単にアロマターゼ阻害剤によるテストステロンの蓄積に因るものと解釈される。従って、アロマターゼの適切なコントロールは性分化に重要であるが、エストロゲンがメスの性決定に関与するのかどうかは依然不明のままである。これらの結果を総合すると、外から与えたエストロゲンによるオスのメス化には ER が関与する可能性が高いこと、従って、メスが卵巣を形成するときにも ER のターゲット遺伝子の活性化が起こるものと考えられるが、このとき、ER は必ずしもエストロゲンが結合して活性化されているわけではないか、あるいは、エストロゲンやER に依存しないメスの性決定機構も同時に存在すると考える必要がある。以上の実験結果をまとめた論文は、平成13年度日本動物学会論文賞(Zoological Science Award)を受賞した。 (下等脊椎動物の性決定機構) ER は脊椎動物全般においてエストロゲンの多様な生理機能に重要であると推論されているが、マウス以外の下等脊椎動物では、個々の生理現象にどの受容体が関与しているのか明らかにされた例はない。メダカにおいて、エストロゲンは性転換を起こすが、これよりかなり高濃度ではあるが胚の血管中に明瞭な血栓形成を引き起こすことを見いだした。血栓症は心筋梗塞や脳梗塞の主原因であり、先進国においてはこれによる死亡率が極めて高い。また、女性においては、経口避妊薬の使用や閉経後ホルモン療法によるエストロゲンの摂取により血栓症のリスクが高くなることが知られている。従って、エストロゲンによる血栓症の発症メカニズムの解明は緊急の課題である。また、工業化学物質、洗剤、農薬等の中にはエストロゲン様作用を持ち、ヒトや野生動物の内分泌系を攪乱し生殖機能障害を引き起こすものが知られている。このような「環境ホルモン」による河川、湖沼の汚染は現在深刻な社会問題であり、極微量の「環境ホルモン」を迅速、安価、簡易に検出できる淡水生物の開発は、21世紀の人類に多大な恩恵を与えるものと思われる。 そこで、当研究室では、主要な ER であるα-タイプを高発現するトランスジェニック・メダカを作成することにより、野生メダカが反応しない極低濃度のエストロゲンで生理作用を示す「エストロゲン高感受性メダカ」を開発することを目指した。本メダカは1)ER α-タイプが関与する多様な生理機能を解明するためのモデル動物として、2)「環境ホルモン」を高感度、迅速、安価、簡易にモニター可能な淡水生物として、極めて有効であることが期待される。ER cDNA をメダカβ-アクチンプロモーターに連結しメダカ胚に注入し、現在のところ、3系統のトランスジェニック・メダカを確立している。(ER in situ hybri))いずれの系統の受精卵も野生メダカ卵が血栓形成しない極低濃度のエストロゲン存在下、わずか2〜3日間で血栓を形成し(Tgメダカ血管形成と血栓)、その後発生が異常となりふ化できない。トランスジェニック・メダカの胚は、野生メダカに比べて数千倍も高い感受性を示した。このことは、エストロゲンによる血栓形成には ER α-タイプが関与することを示す。また、脊椎動物において ER は広く保存されているので、魚からヒトまで共通の血栓発症メカニズムがあることが示唆される。また、当研究室が世界で初めて開発したエストロゲン高感受性メダカは、卵が透明なため実体顕微鏡下で容易に血栓の観察が可能であり、1)血栓の発症メカニズムを解明するためのモデル動物として、2)医薬開発分野における血栓症のバイオアッセイ系として、さらには、3)あらゆる生物の中で唯一、極低濃度のエストロゲンに対して急性毒性を示すので、環境水に含まれる極微量の「環境ホルモン」をリアルタイムで連続的にモニター可能な淡水生物として極めて有望である。 (日刊工業新聞) (中国新聞) |
|
6.メダカの由来など〜ちょっと喫茶タイム〜 |
|
| |前項目|目次|次項目| | |
|
(広大フォーラム)
俗にメダカという名称は、貝原益軒の「大和本草」(1709年)に「目高」とあるように、すでに江戸時代には使われていたようです。体が小さい割には大きい目を持ち、しかも顔から目が飛び出ている魚の特徴を良く表した呼び名です。メダカを意味する方言は多く、4794もあったそうです。かつては、いかにメダカが庶民に親しまれていたかが判ります。ウルメ(青森)、ギンメ(群馬)、タカメンチン(鹿児島)などは目(メ)の特徴を指し、コメンコ(静岡)、コメエト(岡山)、マメンジャコ(大阪)などは体が小さいところからそう呼ばれていたのでしょう。戦前の新潟地方では、メダカを食用にしていたという報告があります。広大な田んぼで稲作を行うこの地方ではメダカがたくさん取れたのでしょう。ざっとゆで上げた後、味りん、しょう油、砂糖などで味付けをしてつくだ煮風に煮込む。土製の瓶類に入れて保存し、必要に応じて副食物としていました。現在も食用のほか、薬として眼の病気や乳腺炎に効くと言われています。 メダカはアジア特産の淡水魚で、東南アジアを中心に西はインド、パキスタンからタイ、マレーシア、フィリピン、朝鮮、日本まで広く各地に分布しています。メダカの学名 Oryzias は稲の学名 Oryza に由来します。メダカが水田に多く見られたことが、稲の学名を名に冠することになった理由と思われますが、現在では郊外の水田にメダカを見つけることがなくなりました。ニホンメダカの学名 Oryzias latipes は、1906年(明治39年)に命名されました。アジア各地に住むメダカの交雑実験では、オスがメスを追いかけたりメスの周りを泳いだりした後、産卵行動をとる場合が多いのですが、生まれた卵はほとんど孵化しません。染色体の研究から約200万年前に分岐し、アジア各地で独自の進化を遂げたと推測されています。 わが国におけるメダカの産地は奈良県大和郡山市と愛知県弥富町で、他の観賞魚とともに養殖されています。野生のメダカは体色が黒色ですが、市販のメダカはこれの変異種で体色が緋色(オレンジ)のヒメダカが主です。他に、白メダカや青メダカなども売られています。私の研究室では、オスが緋色でメスが白になる特別なメダカを用いて、環境ホルモンの影響を調べています。このメダカを使うと、オスメダカが環境ホルモンでメス化し産卵してしまう仕組みを研究するのに都合がよいのです。これまであまり人の役に立つ事のなかったメダカですが、最近では、変異メダカの染色体地図を利用して遺伝子を取得したり、遺伝子を任意に組換えたメダカを作成することができるようになり、脊椎動物のモデルとして生物学のいろんな分野で強力な武器となっています。 |
|
7.原著論文 |
|前項目|目次|次項目| |
|
|
8.著書 |
|前項目|目次|次項目| |
|
|
| 9.総説 | |前項目|目次| |
|
|
| |▲top| | |
|BACK to 6 |history BACK| |
|
| 広島大学・自然科学研究支援開発センター 遺伝子実験部門(遺伝子実験施設) |